
コンポーネントブランドのSRAMは新型のE1が出てきたことでより注目され、多くのプロチームだけでなく私たちにとってもより身近なメーカーになっています。
ディスクブレーキの車体に乗っていると最も交換する頻度が高い消耗品がディスクブレーキパッドです。
SHIMANOではレジンかメタルの2択でもSRAMでは4種類も発売されています。
今回はSRAMの4種類のブレーキパッドの違いと基礎知識について紹介していきます。
目次
SRAM ディスクブレーキパッドの種類

SRAMではバッキングプレートのカラーを見ることで種類が分かるようになっています。
ORGANIC ALUMINUM(QUIET/LIGHTWEIGHT)¥4,610-

パッドの材質:オーガニック(さまざまな有機材料(非金属)で成形されている)
バッキングプレート:アルミニウム(プレートカラーはシルバー)
メリット→軽量で静か/パッドに馴染みが出るまでが早い/初動に優れている
デメリット→摩耗が早い/雨や泥の状況下に弱い
このパッドをお薦めするのは…
・晴れた状況下で走ることが多い方
・小まめなブレーキ動作を行う方(初動の制動力に優れているため)
・より軽量なパッドを求めている方
重量比較


ORGANIC ALUMINUMはLIGHTWEIGHTと書かれている通りバッキングプレートにアルミを使用し10gと軽く、他のパッドと比較すると約半分、10g程度の軽量化になります。
値段差が800円程度で片側10g、前後換えたら20gもの軽量化に繋がるのであればヒルクライムや軽量重視の方へのメリットは大きそうですね。
ただし遠心力が影響するホイールのリム重量が10g軽量化することと比較すれば、走りそのものへの影響は少ないです。
ORGANIC BLACK(QUIET)¥3,820-

パッドの材質:オーガニック(さまざまな有機材料(非金属)で成形されている)
バッキングプレート:スチール(プレートカラーは黒色)
メリット→SRAMが出すパッドの中で最も静か/パッドに馴染みが出るまでが早い/初動に優れている
デメリット→摩耗が早い/雨や泥の状況下に弱い
このパッドをお薦めするのは…
・晴れた状況下で走ることが多い方
・小まめなブレーキ動作を行う方(初動の制動力に優れているため)
ORGANIC BLACK(QUIET)はSRAMが発売しているパッドにおけるスタンダードとして位置づけられ、価格も抑えめになっています。迷った時にはこちらを選ぶと良いでしょう。
ORGANIC GREY(POWERFUL)¥4,020-

パッドの材質:オーガニック(さまざまな有機材料(非金属)で成形されている)
バッキングプレート:スチール(プレートカラーはグレー)
メリット→静か/パッドに馴染みが出るまでが早い/初動に優れている
デメリット→摩耗が早い/雨や泥の状況下に弱い
このパッドをお薦めするのは…
・晴れた状況下で走ることが多い方
・静かなオーガニックタイプでありながらより強力な制動力を求める方
体重が重い方や峠方面を多く走る方であればORGANIC BLACK(QUIET)よりもこちらのORGANIC GREY(POWERFUL)を使った方が短時間でより強い制動力をもって速度を抑えられるのでお薦めです。
SINTERED COPPER(HEAVY DUTY)¥3,820-

パッドの材質:シンタード(パッド材料の化合物内に金属が含まれています)
バッキングプレート:スチール(プレートカラーは銅色)
メリット→オーガニックパッドよりも高温化でブレーキの効きが落ちにくい/濡れた状況下でも制動力が落ちにくい
デメリット→音が出やすい/パッドの馴染みが出るまで時間がかかる
このパッドをお薦めするのは…
・グラベル等、通常よりも過酷な使用環境で走る方
・ダウンヒルでの走行
・雨や泥の環境下で走ることが多い方
シマノでいるレジン/メタルのうちメタルパッドに相当するのがSINTERED COPPER(HEAVY DUTY)になります。
※上記価格は2024年7月時点のものになります
ブレーキパッドの付属品

SRAMではブレーキパッドを購入するとパッドを固定するためのボルト等付属品があります。
SRAM ディスクブレーキパッドの厚みと交換タイミングについて


SRAMのディスクブレーキパッドは実測だとバッキングプレートとパッド摩擦素材を併せると厚みが4mmあり、パッド摩擦素材のみだと約1.9mm程度あります。
SRAMは公式において「ブレーキパッドはバッキング・プレートとパッド摩擦素材の合計の厚さが 3 mm 以下になっ
たら交換しなければなりません」とあります。
上記の画像を例にして言えばバッキングプレートが2.09mmに対しパッド摩擦素材は0.91mmで3mmになります。
そうなるとパッド摩擦素材は元々約1.9mmあったので1mm程度削れたらメーカー推奨の交換時期となります。
よりシンプルに考えるならパッド摩擦素材が元の厚みから半分程度になったら交換と考えると良いでしょう。
またSRAMのブレーキローターは合計の厚さが 1.55 mm 以下になった場合に交換推奨となります。
SRAM ディスクブレーキパッドとブレーキローターの組み合わせについて
SRAMでは「油圧ディスクブレーキのパッドをローターと馴染ませる過程で、ブレーキパッドの薄い層がローターに転写されます。この 2 つの表面間の摩擦により、強力なブレーキが実現します。そのためブレーキパッドの化合物を交換する場合、油圧ディスクブレーキの最適なパフォーマンスを得るにはローターも交換することが重要です。」と公式に書かれています。
簡単に言えばSRAMではパッドの材質がローターに移った(馴染みがでた)時に強い制動力が出るので、新品のパッドに変える際に材質が変わると馴染みがでたローターと合わなくなるためローターも新品に変えることを推奨しています。
以下の表は、SRAMが最良の結果を得るために交換が必要なブレーキパッドの化合物とローターの組み合わせを示しています。

表を見ると…
ORGANIC GREY(POWERFUL)をこれまで使っていた場合…ORGANIC GREY以外のパッドを使う際はどれであってもローターの交換を推奨
ORGANIC BLACK(QUIET)をこれまで使っていた場合…ORGANIC GREY(POWERFUL)とSINTERED COPPER(HEAVY DUTY)に変える際はローターの交換推奨
ORGANIC ALUMINUM(QUIET/LIGHTWEIGHT)をこれまで使っていた場合…ORGANIC GREY(POWERFUL)とSINTERED COPPER(HEAVY DUTY)に変える際はローターの交換推奨
SINTERED COPPER(HEAVY DUTY)これまで使っていた場合…SINTERED COPPER以外のパッドを使う際はどれであってもローターの交換を推奨
※ここで書かれていることはSRAMのメーカー公式による推奨ではありますが、組み合わせでローター交換推奨の際にローターを変えなかったとしてもブレーキが効かなくなるといった致命的な現象は起こりません。
上記の表を見る限り、同じブレーキローターを使い続けたい場合にはパッド交換の際には元々使っていたブレーキパッドと同じものを使い続ける事がお薦めだと言えます。
SRAMディスクブレーキの慣らし手順
SRAMでは新品のブレーキパッドと新品のブレーキローターに交換した際には特定の慣らし作業を行うことでより強力な制動力と静かなパフォーマンスが発揮されます。
上記の動画で紹介していますが、
① 適度な速度まで加速し、歩行速度まで落とす動作を20回繰り返す
② ①よりも速い速度まで加速し、歩行速度まで落とす動作を10回繰り返す
③ ①②が終わったら走らずにブレーキを冷ますことで材質を硬化させる
注意点としてはこれらの作業において完全にホイールをロックさせるブレーキをかけてはいけません。
①②に関しては完全に止まらず繰り返さなくてはならないので「往復できる場所」「安全な場所」を確保する必要があります。
車に詳しい方であればブレーキの馴染み出しでご存知だと思われますが、ホイールがロックせずに加速と減速を繰り返すことでブレーキーローター全体に均一に馴染みが出るため、より安定した制動力を発揮できます。
※この慣らし作業はSRAMが推奨するものではありますが、やらなかったとしても極端に制動力が出ないといったトラブルが起きるわけではありません。

是非、SRAMにおけるパッド交換をする際の参考にしてみてください。
この記事を書いたのは…

STAR☆BIKES 瀬谷祐介(メカニック/ライドイベントアテンドスタッフ)
自転車業界に勤めて7年目、普段はロードバイクでのロングライドや県内の未走行のコースを探索し、STAR☆BIKESのコース紹介記事も書いている。ヒルクライムが好きでMt.富士ヒルクライムにも毎年出ているが、登りはけっして速くない。
2024年の富士ヒルで念願の初ブロンズを達成。夏場にはMTBでふじてんに行きパークライドも楽しむ。
これまで50台近いバイクに乗り換えており、バイクの特徴を掴んでお客様の希望に合わせた1台を提案することに長けている。