スポーツ自転車の新テクノロジーは留まることがなく、日々新たなパーツが登場しております。
STAR☆BIKESでメインに取り扱う「TREK」のバイクのアッセンブルは毎年見直され、快適にサイクリングを楽しめるようになっております。
ここ10年で一気に普及した「フロントシングル」もその一つです。
目次
フロントシングルとは
今回は「フロントシングル(ワンバイ)」についてご説明致します。
この技術はマウンテンバイクやグラベルロード、シクロクロスなどのオフロードバイクを中心に採用されています。
そのメリットは幅広く、クロスバイクにも応用することができます。
トレックのクロスバイク「FX 3」や「Dual Sport」に標準で採用されているドライブトレインのテクノロジーでもあります。
たいていの技術にはメリットばかりではなく、デメリットも存在しますので、ご自身のライフスタイルに合わせて、快適カスタマイズをしましょう!
フロントシングルのメリット
まずはメリットからご紹介です。
クロスレシオの細かなギア調整から解放され、シンプルかつ直感的に操作ができる。
フロントシングルが登場したオフロードシーンはロードバイク等のオンロードシーンと異なり、そこまでシビアなケイデンス(1分間当たりのクランク回転数)の調整が必要とされない傾向があります。
これはクロスバイクにも言えることです。
コミューター(街乗り)として使用されることが多いクロスバイクは、ロードバイクのように数十km~100km超などのロングライドには不向きです。
比較的短距離を軽快に走行することが主目的とされるため、疲労を極力貯めないようにクロスレシオの細かなギア調整を必要とするケースは少なくなります。
部品点数が少なくなり、軽量化に繋がる
自転車は軽量性が走行性能の全てというわけではありませんが、漕ぎ出しの加速感や上り坂では大きく貢献してくれます。
街中に溢れる交差点でのストップ&ゴーを楽にこなしたいですよね。
なぜなら自転車は加速するときが一番疲れるのです。
見た目がシンプルで、スタイリッシュ
たくさんの部品で構成されている自転車ですが、クランクは車体の顔!
フロントディレイラー(前変速機)がなく、見た目をスマートにすることで美しいと感じる方は多いのではないでしょうか。
フロントシングルのデメリット
良いことばかり書いていては面白くありませんよね?
次はデメリットについてご紹介します。
自身のライドスタイルとギア比があっていない⁉
大きくギア比を変更することができるフロント変速が無い為、乗り手のライドスタイルや体力によってはギアの比率が合っていないことが稀にあります。
※ギア比についてはコチラを参照
上り坂が大変になるかもしれない。
フロント変速は走行シチュエーションの変化に応じて、大きくギア比を変更する必要性に駆られることがあります。
上り坂は重力に反して高いところに登りますので、誰もがスピードは落ちます。
するとケイデンス(クランクの回転数)が落ち、非効率なペダリングになってしまいます。
そこでギアを一気に軽くするわけですが、フロントシングルですとギア比の変更幅にも限界があります。
いわゆる激坂を上る時や、長い斜面を登るときは一番軽いギアにしても適正なケイデンスが保てない可能性があります。
下り坂であまりスピードが出せないかもしれない。
下り坂を重力に引き寄せられて文字通り斜面を転がり落ちていきます。
乗じてスピードも勝手に上がっていきます。
もっとスピードを出そうとすればペダルを漕ぐわけですが、フロントシングルですと一番重たいギアにも制限があります。
ギアの微調整がしにくい
ギアの変速が細かい方がケイデンスの微調整がしやすく、フロントシングルだと調整幅が大きくなります。
しかし、ロードバイクのように長距離を走行したり、ビンディングを使用したりしないのであれば、細かなギアの調整というのもあまり生きてはきません。
ちゃんとしたサイクリングをしたい、という方はフロントダブルの方が良いかもしれませんね。
TREKのクロスバイク
トレックのクロスバイクには2つの車種があります。
ややロード寄りの「FX」と、ややマウンテンバイク(MTB)寄りの「DualSport」です。
それら2車種はアッセンブルされるパーツによりいくつかのグレードに分かれており、その中にはフロントシングルモデルもあります。
フロントシングルモデル
トレックのクロスバイクの中で、フロントシングル仕様のモデルは下記の4車種です。
変速段数 | フロントギア数 | リアギア数 | 最も軽いギア比 | 最も重いギア比 | |
FX SPORT 5 | 11 | 40T | 11-42T | 0.952 | 3.636 |
FX SPORT 4 | 10 | 42T | 11-46T | 0.913 | 3.818 |
FX 3 | 10 | 40T | 11-46T | 0.869 | 3.636 |
DualSport 3 | 10 | 40T | 11-46T | 0.869 | 3.636 |
ギア比欄の数字はクランクを1回転させた際に後輪が何回転するかを示しています。
要するに数字が小さいほど漕ぎが軽く、数字が大きいほど漕ぎが重くなります。
フロントダブルモデル
トレックのクロスバイクの中で、フロントダブル仕様のモデルは下記の3車種です。
変速 段数 | Fアウターギア | Fインナーギア | リアギア構成 | 最も軽いギア比 | 最も重いギア比 | |
FX 2 | 9 | 46T | 30T | 11-36T | 0.833 | 4.181 |
FX 1 | 8 | 46T | 30T | 11-32T | 0.937 | 4.181 |
DualSport 2 | 9 | 46T | 30T | 11-36T | 0.833 | 4.181 |
フロントシングルとフロントダブルの比較
フロントシングルモデルと比較すると、フロントダブルモデルの軽いギア比はほぼ同様の数字ですが、重いギア比の数値がとても高いことが分かると思います。
ここまで重いギア比は下り坂でもかなりスピードを出して使用するギア比になり、街中ではなかなか使用する機会はありません。
実用的に使用するギア比としてはフロントシングルでほぼカバーできてしまうのです。
しかし脚力のある方等にとっては、漕ぎが軽すぎると感じることもあるかもしれません。
その場合はギアをカスタムしてその比率をオーナーのサイクリングスタイルに合わせていきます。
TREK DualSport3 × ドライブトレインカスタム例
先日ご納品させていただきましたトレック デュアルスポーツ3。
しばらく乗り続けるうちに体力も徐々に向上していき、「フロントシングル(40T)ではギア比が足りなくなってきた」とのことでご来店。
デフォルトのクランクandチェーンリングは歯数の変更が困難なため、他のコンポーネント同様にSHIMANO製のクランクをお勧めさせていただきました。
DualSportシリーズの最大チェーンリングサイズである42T(シングルの場合)の装着を致します。
しかし懸念点も同時にありました。
デフォルトのリアディレイラー(後ろ変速機)はSHIMANO RD-M5120となり、ダイナシステクノロジーの採用とHG-Xチェーン互換となっています。今回装着のクランクはLINKGLIDEシフティングシステムであるため、本来互換が謳われておりません。
ただ、デフォルトのチェーンはSHIMANOではないKMC製を採用しております。恐らく、フロントシングルであるため問題は無いと判断しての組み合わせでしょう。ですので、心配材料としてはLINKGLIDEシフティングシステムとチェーンの互換のみとしました。
もちろん、歯数が増すことによるチェーン長不足の可能性もありました。
チェーンカバー仕様
シャフトは非ドライブクランクに依存。
オーナーお待たせいたしました。
オーナーにとって軽すぎるローギアをやや重くし、トップギアをより重くするカスタムの完了です。
DualSport3 | 最も軽いギア比 | 最も重いギア比 |
デフォルトの仕様 | 0.869 | 3.636 |
カスタム後の仕様 | 0.913 | 3.818 |
これで快適なサイクリングができるようになりましたね。
ついでに全てのコンポーネントがSHIMANOで統一されてスッキリしました。
自転車に関する疑問や要望がありましたら何でもご相談ください。
STAR☆BIKES 内田