スポーツバイクの洗車は主に2種類あります。
それは「水なし洗車」と「水あり洗車」です。
前者の水なし洗車は主にケミカルを用いて汚れを落とした後に、適切な注油を行います。
汚れを落とすために水を使わないので、屋内や自宅でも作業がしやすいのがメリットですが、
一方でケミカルを多量に使ったり、隅々まで汚れを落とそうとすると時間がかかるデメリットもあります。
一度の洗浄で全て綺麗にするよりも、数回のライドごとに必要な箇所のみ綺麗にする場合は水なし洗車がお薦めです。
水あり洗車は主にスポーツバイクショップが所有する洗車場や洗車専門店のような自転車を直接洗える環境があれば、少ない時間でバイク全体を綺麗に出来ます。一方でバイクに関する知識がないと余計なところにまで水が入り込んでしまい、そのまま放置すると錆びを発生させてしまったり、大掛かりなグリスアップ作業といった注油以上に手間がかかる可能性もあります。
数か月~半年に蓄積した汚れを落としたい場合やレース前の大事な場面、レース後に酷く汚れてしまった場合には一度で全体を洗浄できる水あり洗車がお薦めです。
今回は自宅でも気楽に行える水なし洗車における、必要なケミカルと部分ごとの洗浄方法をご紹介します。
チェーン洗浄
スポーツバイクの定期的なメンテナンスとして最も作業頻度が多いのがチェーンの洗浄・注油作業です。
チェーンに塗ったオイルはおよそ300㎞前後の走行で落ちます。
オイルがない状態で走行すれば、チェーンとギアの噛み合いで金属同士が強くぶつかり、摩耗・パーツの寿命を早めてしまいます。
またオイルが過剰に付着した状態で走行すれば、走行時に砂やほこりを巻き込み、最終的に泥のように油が固まり走行性能を低下させます。
そのためチェーンの洗浄・注油作業は走行距離・環境に応じて小まめに行うことでバイクの性能を良い状態に保つことに繋がります。
必要なケミカル
wako’s チェーンクリーナー
各種チェーンやパーツ類の頑固な油・グリース汚れを落とす非乾燥性の洗浄剤で、生分解性試験で約80%と非常に高い生分解度を示す環境に優しい洗浄剤。
wako’s フォーミングマルチクリーナー
素材に優しい弱アルカリ水溶性ノンシリコーンタイプの泡状『水なし簡単洗浄剤』です。スプレー後、水洗い・濯ぎすることなく拭き上げるだけです
wako’s ラスペネ
強力な浸透力と防錆性を有するフッ素化合物の浸透潤滑油剤。360°すべての傾きで噴射可能な特殊バルブと折りたたみ式ノズルを採用、遠距離や狭い場所へも容易に噴射できます。水置換性なので水に濡れた状態でも効果を発揮します。
wako’s チェーンルブ リキッド
ドリップ式の自転車競技用チェーンオイル。
用途に応じて3種類用意されており、それぞれ粘度が異なります。
作業手順
①チェーンクリーナーをチェーンに吹きかける
チェーンのコマ部分に当てるようにチェーンクリーナーを1周吹きかけていきます。
※注意
ディスクブレーキの車体ならば特に注意が必要なのが、チェーンクリーナーやスプレー式のケミカルをチェーンに吹きかける際は必ず当て布をすること、もしくは後輪を外して作業をすること。
油分を含んだケミカルがスプレーにより周りに飛び散ることで、ブレーキローターに油分が付着して音鳴りトラブルに繋がります。
②ブラシで汚れをかき出す
wako’s チェーンクリーナーには豚毛のブラシが付属しています。チェーンに吹きかけてすぐには乾燥しないため、速やかにコマ部分をブラシでこすり、コマ内部の汚れをかき出してあげます。
③チェーン周りの部品洗浄
チェーンの汚れはクランクやスプロケット、プーリーの歯にも付着しています。
チェーンクリーナーをウエスやマイクロファイバータオルに吹きかけて拭き取ってあげましょう。
チェーンリングやスプロケットの隙間はウエスを差し込んで左右に擦ってあげると汚れを落とし易いです。
④浮き出た汚れを拭き取る
wako’s フォーミングマルチクリーナーは泡状の洗浄剤で、チェーン全体に吹きかけた後にウエスやマイクロファイバータオルで拭き取ることで綺麗にできます。
拭き取った後も汚れが目立つようなら①から③の手順でもう一度作業を行います。
⑤ラスペネでオイルを塗るためのベースを作る
フォーミングマルチクリーナーは速乾性ではないため、拭き取った後にすぐチェーンオイルを塗ってしまうと、クリーナーとオイルが混ざってしまい正しい性能が発揮されません。
ラスペネは粘度の弱いオイルですが、水置換機能があるためチェーンにかけることで残ったクリーナー成分を弾き落としてくれ、チェーンオイルの効果を100%発揮するための土台を作ってくれます。
※注意
ラスペネをかけたあとは使い捨てウエスを使って綺麗に拭き取りましょう。
ラスペネをかけたままチェーンオイルを付けてしまうとオイル同士が混ざりあったり、チェーンがベトベトになってしまうので周りに飛び散ったり、正しく性能が発揮されません。
残ったクリーナーを強制的に弾いて土台作りのために塗っているのでしっかり拭き取って構いません。
⑥チェーンオイルを1滴ずつコマにかける
ドリップ式はスプレー式と異なり1滴ずつ垂らしながらチェーンのコマに塗ります。
たくさんつけてしまうとチェーンがベトベトになり、汚れを巻き込みやすくなります。塗った後は少し放置してコマ内部にオイルが染み込んだ後に、軽く拭き取ってあげましょう。目安はチェーンを手で触るとうっすらオイルが付着するぐらいです。
以上でチェーンの洗浄・注油は完了です。
※チェーンオイルの選び方
wako’s チェーンルブ リキッドですが、Speedが最も粘度が低くさらっとしており、Powerが粘度が高くトロっとし、Extremeがさらに粘度が高いです。
スタッフは以下の用途で使い分けています
Speed:高ケイデンス重視のペダリングで抵抗を少しでも減らしたい。
Power:トルク重視のペダリング、パワーがある人向け。Di2やAXS等電動コンポを使っている際に使用。
Extreme:雨のレースやMTBの泥を巻き込むような環境。ブルベなど一度で長距離を走る際に使用。
各部注油と錆防止
スポーツバイクには定期的に注油をすることで可動部の潤滑性能を維持したり、錆び発生を抑制することができます。
必要なケミカル
wako’s ラスペネ
強力な浸透力と防錆性を有するフッ素化合物の浸透潤滑油剤。360°すべての傾きで噴射可能な特殊バルブと折りたたみ式ノズルを採用、遠距離や狭い場所へも容易に噴射できます。水置換性なので水に濡れた状態でも効果を発揮します。
ラスペネは水置換機能をもっており、雨のライドや洗車時に手の届かない深部に染み込んだ水分を弾き落とし、潤滑と防錆の機能をもったケミカルです。ママチャリや一般車のチェーンオイルとしても使えるのと、チェーン洗浄・注油作業時の時短としても必須なので持っておきましょう。また業務用と小型のスプレー式がありますが、スプレー式は液体容量が少ないため、家庭用でも業務用がお薦めです。
作業手順
①リアディレイラーのバネに注油
リアディレイラー内部にあるバネに注油をすることで錆を防止します。
また吹きかける際は当て布をして周りに飛び散るのを防ぐことと、吹きかけた後は軽く拭き取ってあげましょう。
また可動部にラスペネを差すことで潤滑性能の維持に繋がります。
②フロントディレイラーのバネに注油
フロントディレイラー内部にあるバネに注油をすることで錆を防止します。
また可動部にラスペネを差すことで潤滑性能の維持に繋がります。
③ペダルのバネに注油
ペダルのバネ部分に注油をすることで錆防止および潤滑性能を維持します。
ラスペネをかけにくい場所には綿棒の先端に付けて、塗ってあげると作業がし易いです。
④各ボルトの錆び防止に注油
自転車の中でも汗が付いて錆びやすいステム周りのボルトにもラスペネを薄く塗ってあげると効果的です。
ボルトの頭部分には綿棒を使うと塗りやすくなります。
フレームおよび各パーツ洗浄
フレームに付着した汚れは軽いものやドリンクのこぼれた跡は水拭きで十分です。
それでも落ちない汚れであればwako’s フォーミングマルチクリーナーがお薦めです。
弱アルカリ性でフレームの塗装やゴムパーツなど傷めずに洗浄することが可能です。
またコンポーネントやホイール・タイヤに至るまでこれ1本で洗浄できます。
必要なケミカル
wako’s フォーミングマルチクリーナー
素材に優しい弱アルカリ水溶性ノンシリコーンタイプの泡状『水なし簡単洗浄剤』です。スプレー後、水洗い・濯ぎすることなく拭き上げるだけです
ディスクブレーキローター・パッド洗浄
ディスクブレーキおよびローターは通常であれば、ケミカルを使って洗浄する必要はあまりありません。
砂埃が付いていれば綺麗なウエスで軽く乾拭きや水洗い程度で構いません。
ただし、走行後に数週間乗らないのであれば洗浄することをお薦めします。
またブレーキ時に常時甲高い音鳴りがする際は、油分が染み込んだことが原因の可能性が高く、今回紹介する作業とは別により強力な脱脂、もしくはパーツ交換が必須となります。
今回の作業では長期間使用しない際に付着したままのパッド滓が状態変化し、音鳴りトラブルに繋がることを事前に防止するための洗浄方法です。
必要なケミカル
イソプロピルアルコール
IPAとはイソプロピルアルコールの略でアルコール類の一つです。ただしお酒で使われるエタノールと異なり、毒性が強く飲むことはできません。主に工業用の用途で洗浄剤や塗料の希釈剤として使われています。
大手通販サイトで検索すれば500mlあたり1000円前後で発売されています。
作業手順
①ホイールを外してパッドの表面を拭き取る
※この作業では油分が付いたウエスなどパッドやローターに油が付着する可能性を徹底排除して行ってください。
まず綺麗なウエスにIPAをかけて、ブレーキキャリパー内のパッドの間に差し込み、左右に擦ってパッド表面の汚れを拭き取ります。
※汚れを拭き取ると…
走行後のパッドの表面にはこれだけのパッド滓による汚れが付着しています。
通常であれば、またすぐに走行する事でこの汚れは上書きされ続けトラブルにはなりません。
ただし、同じ汚れが長期間付着したままだと、湿気により水分を含んだり状態が変わることで音鳴りの原因に変化することがあります。
②ローターの汚れを拭き取る
綺麗なウエスにIPAをかけてブレーキローターの表面と裏面を拭き取ります。
以上の作業をライド終了後に行う事で、次のライドまで時間が経ってしまった際に発生しうる音鳴りトラブルの予防をすることができます。
まとめ
上記の「チェーン洗浄・注油」「各部注油と錆防止」「フレームおよび各パーツ洗浄」「ディスクブレーキローター・パッド洗浄」を必要に応じて行うことでバイクのパフォーマンスを良い状態で維持できます。
これらの作業でカバーできない大掛かりな汚れや、ご自宅でケミカルを用いて洗浄することが難しい場合にはお店の水あり洗車をご利用ください。