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【How to】リム幅とタイヤ幅と体重と用途による適正な空気圧

ロードバイクに適した空気圧は7~8年前であれば乗り手の体重でおよそ決まっていましたが、近年では体重だけでなくタイヤ幅、ホイールの内幅、クリンチャーかチューブレスか、フックありかフックレスか等、様々な要因が重なって空気圧が決まります。
ここではディスクブレーキが主流になった現代のロードバイクに乗る上で基準となる空気圧の考え方をお教えします。

事前知識

何故近年は推奨空気圧が大きく下がったのか?

2017 Émonda SL 7

7~8年前、ホイールのリム面をゴムのブレーキシューで挟むリムブレーキ時代のロードバイクと言えば、タイヤの太さは23~25cが当たり前でした。空気圧は100psi(およそ7bar)以上は当たり前で、体重が重い方であれば110~120psiで案内されることもありました。
この時代であれば体重だけで大まかに空気圧を決めることは間違っていませんでした。
それというのもリムブレーキ(キャリパーブレーキ)によって各社のホイールでリム外幅およびリム内幅が大きく変わらなかったからです。

その後ディスクブレーキが台頭するにあたり、ブレーキがリム面を挟まなくなり、リム外幅に制限がなくなったため、各ホイールメーカーが用途に応じてリムの幅を大きく変えるようになったことで推奨タイヤ幅はより太く、リム内幅が広くなるにつれ推奨空気圧は低くなったのです。

DT SWISSホイールマニュアルより

上記表はDT SWISSから出ているホイールマニュアルのフック付きリムにおける最大空気圧を表した表です。
7~8年前はどのメーカーであってもリムブレーキの縛りにより、リム内幅(RIM INNER WIDTH)は15~17mmでした。より細いものでは13mm近いこともあり、推奨タイヤ幅は23~25cで最大空気圧は120~130psiだったため、低くて100psiが目安でした。

ディスクブレーキが出てきたことでリム内幅は19mm以上が当たり前になりました。近年ではリム内幅は標準で21mm、メーカーによってはチューブレスレディでの使用を推奨とし内幅23~25mmも増えてきました。
そうなると推奨タイヤ幅も太くなり28c前後のタイヤ幅が一般的となり、太いタイヤはエアボリュームも大きいため空気圧が低くても潰れにくく、グリップ力は上がりながらも路面の摩擦抵抗は大きく増えない(転がりは軽い)ために80psi前後といったより低い空気圧での運用が可能となったのです。

チューブレスレディ参考

さらにクリンチャー(インナーチューブ)仕様からチューブを使わないチューブレスレディ仕様が増えたことで、タイヤはリム打ちパンクのリスクが軽減され、より低い空気圧での運用が可能となりました。
低い空気圧は路面の振動吸収性能を上げ乗り心地が良くなります。タイヤの変形率も大きくなり地面に接着するかのようにグリップするため、競技で走る方であればより高速域での下りカーブもスリップしにくく攻めやすくなります。

チューブレスレディに特化したリム構造としてフックレスを採用したホイールも近年増えてきました。
タイヤビードを引っかける構造のフック付きリムと比較しフックレスはビード付近の幅(上記画像B)が拡がり、より自然な形でタイヤは膨らみます。逆にフック付きだとビード付近は狭まり、太いタイヤを履かせれば履かすほどお餅を膨らましたような歪な形状にタイヤは膨らみます。
フックレス構造のような根元からタイヤが太ければ、空気圧が低くてもよりタイヤは潰れにくく路面摩擦抵抗は増えにくいです。
そのため近年チューブレスレディであれば体重とホイール・タイヤの仕様にもよりますが60psi(4bar程度)前後で走ることも普通になってきました。

考えるべきはタイヤ幅とリム内幅の関係

適正空気圧を考える上で把握しなくてはならない項目が以下になります。

  1. 自身が使っているホイールはリム内幅が何mmあるのか?
  2. 使用するタイヤはリム内幅何ミリを前提に作られているのか?

1に関しては例えばタイヤの太さを23mmから28mmに変えたから空気圧を下げるのではなく、まず自身のリム内幅に対し太いタイヤ幅が推奨なのかどうか調べる為です。例えば15mmの狭いリム内幅に23mm幅のタイヤは適正のため、指定空気圧の範囲内で空気圧を下げても問題ありませんが、28mm幅のタイヤを入れればタイヤの膨らみ方は歪になり、その上で空気圧を極端に下げればタイヤは大きく潰れて転がりの悪さやリム打ちパンクのリスクが上がります。

パナレーサー アジリスト サイズ適合表

2に関してがここ最近タイヤの空気圧やそもそもの選び方を難しくしているのですが、タイヤの28cや30cと言った表記は実測値でタイヤ幅が28mmや30mmになることを意味します。
しかし、近年ディスクブレーキが主流になったことでホイール側のリム内幅もメーカー・モデルによって様々になりました。
この内幅とタイヤの関係性がややこしく、タイヤメーカーは製造したタイヤはリム内幅〇〇mmを前提に〇cと表示しているのです。
例えば上の表は日本のパナレーサーが出しているアジリストのサイズ適合表です。
表を見ると、アジリスト28cタイヤはリム内幅19mmに取り付けた場合にタイヤ実測幅が28mmになるように設計されています。

Bontrager Aeolus RSL 51 ホイール内幅23mm

そのためリム内幅が23mmのホイールに装着すると実測幅は30mmと2mm増えます。
こうなると空気圧の推奨は28cで考えるのではなく30cで考える必要が出てきます。

結論として、空気圧はタイヤが○cで考えるのではなく、タイヤ幅の実測値が○○mmだから○○mmでの推奨空気圧で考えなくてはならないという事です。

そのためにも予めタイヤを選ぶ際には、このタイヤはリム内幅○○mmをベースに設計されているから自分のホイールに取り付けたらタイヤ幅の実測値は○○mmになるだろうと購入者側が知っていなければいけなくなったのです。

これらを理解した上で、自身のホイールとタイヤの組み合わせで推奨空気圧は幾つになるのかというと、最近では様々なサイトが計算ソフトを用意してくれています。
今回はSRAMが出しているタイヤ空気圧ガイドを紹介します。

SRAMタイヤ空気圧ガイド

https://axs.sram.com/guides/tire/pressure

SRAMのタイヤ空気圧ガイドは各項目を入力することで推奨空気圧を出してくれます。

項目の入力方法は以下の通りです。

1、ライドタイプ

ライドスタイルはご自身のバイクのタイプ。使用状況に応じて選びましょう。
地表は走る天候に合わせて選びましょう。

2、体重

ライダーの体重は荷物も背負った総重量で入力しましょう。
バイク重量はアクセサリーやバッグを装着した総重量で入力しましょう。

3、タイヤ

ケーシングは軽量重視タイヤなら「薄型」、一般的なレーシングタイヤなら「標準」、街乗り重視やパンク耐久重視タイヤなら「強化」を選びましょう。
タイヤの幅は使用タイヤの〇cの数字を入れましょう。

4、ホイールセット

タイヤのタイプはクリンチャー(インナーチューブ使用)なら「チューブ」、チューブラーなら「チューブラー」、フック付きリムにチューブレス仕様なら「Hooks(Tubeless Crochet)」、フックレスリムにチューブレス仕様なら「Hooks(Tubeless Straight Side)」を選びましょう。
インナーリムの幅は使用しているホイールの内幅を確認して入力してください。

以上を入力してCALCULATEボタンを押せば推奨空気圧が出ています。

ホイールの内幅が変わると…

上記画像は28mmタイヤでクリンチャー仕様の場合にホイール内幅が17mmと23㎜で比較したものです。
同じ条件でも内幅が異なるだけで空気圧が10psi近く異なります。
なので空気圧を考える際にまわりが○cタイヤを○○psiで運用してるという言葉を鵜呑みにして同じ空気圧にするのではなく、自身のホイール内幅だったら…と考えて空気圧を決めましょう。

またあくまでこれはSRAMが考えた推奨空気圧であって実際には乗ってみて調整を加えてください。
例えばスタッフからするとSRAMのガイド数値よりも10~15psi程度高い方が好みだったりします。
特に日本の舗装路は海外と比べて綺麗な路面が多いので、少し高めに設定してもタイヤは跳ねにくいです。
タイヤ自体の硬さやグリップ性能でも変わるので、こればっかりは時間をかけて好みを探っていくしかありません。

さいごに

長くロードバイクに乗っている方ほどリムブレーキ時代の感覚で空気圧を高く設定しがちです。
もし今ディスクブレーキに乗ってホイール内幅もタイヤ幅も広くなっているなら、是非今回のお話を参考にして空気圧を下げてみてください。
これまでよりもタイヤは潰れてグリップするので転がりが重いと感じるかもしれませんが、実際にはタイヤが跳ねずに転がりも軽いためタイムは縮まっていることが多々あります。
もしそれでリム打ちパンクをするようなら、流行りのチューブレスレディに変えたり、僅かに空気圧を上げて様子見をしたり、乗り手側のスキルを上げる等様々な方法があります。
以上、今の時代に合わせた空気圧設定に関するお話でした。

この記事を書いたのは…

STAR☆BIKES 瀬谷祐介(メカニック/ライドイベントアテンドスタッフ)

自転車業界に勤めて8年目、普段はロードバイクでのロングライドや県内の未走行のコースを探索し、STAR☆BIKESのコース紹介記事も書いている。ヒルクライムが好きでMt.富士ヒルクライムにも毎年出ているが、登りはけっして速くない。
2024年の富士ヒルで念願の初ブロンズを達成。夏場はMTBでふじてんに行きパークライドも楽しむ。
これまで50台近いバイクに乗り換えており、バイクの特徴を掴んでお客様の希望に合わせた1台を提案することに長けている。

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この記事を書いた人

スターバイクス代表