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こんにちは、スタッフの瀬谷です。2月に入り富士ヒル本番まで4か月を切りました。
これまでは富士ヒルブロンズ達成の課題として「ダイエット」と「ペダリングの改善」に関してこちらの雑記にて書きましたが、今回は自転車屋らしく私のバイクを元にしたヒルクライムに向けたバイクのカスタマイズについてとお伝えします。
これまでの記事はこちら↓
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目次
ベースとなるバイク
私が今年の富士ヒルクライムで使うバイクは昨年のDomane SL Gen4ではなく、軽量レースモデルのTREK Emonda SLをベースにアップグレードした車体で出場します。
Emonda SLに関する記事はこちらをお読みください↓
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トレックのエモンダ SLはプロが使用する800 Series OCLV CarbonのSLRグレードに対し、コストを抑えた500 Series OCLV Carbonを採用したセカンドグレードのモデルです。2024年ではシマノ105の機械式12速を採用したEmonda SL5が39万円台で購入することができます。私が乗っているのも2023年のSL5がベースです。
上で紹介した記事では軽量化に特化した構成でしたが、今回はホイールやタイヤ、他一部のパーツを変更しています。
ヒルクライムで結果を出すためのカスタマイズ
ヒルクライムに向けたアップグレードは主に「軽量化」と「摩擦・回転抵抗の減少」の2点で性能を引き上げることができます。今回の記事では軽量化についてお伝えします。
軽量化
誰もがヒルクライムに向けたアップグレードといえば最初に「軽量化」を考えます。
ただし、自転車の世界で軽量化は数十グラム減らすだけで場合によって数万円、数百グラムの軽量化なら数十万円かかってもおかしくない世界です。自身の懐具合と相談してどこまでやるのか、どこを率先して変えれば価格を抑えて効果を上げられるのか見極める必要があります。
ホイール
今持っているバイク(フレーム)のままで軽量化をするなら最も影響が大きいのが”ホイール”です。
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前提としてメーカーの完成車に付属しているホイール、例えばEmonda SL5に付属してくるBontrager Paradigm SLは前後合わせて約1850g程度。他メーカーでもオリジナルのアルミホイールで言えば1800~2000g台が一般的です。
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最近はディスクブレーキ仕様のホイールで大手メーカーの最軽量モデルを見ると前後合わせて1200g台のホイール(クリンチャー/チューブレス共用モデル)が増えてきました。
ただし、超軽量ホイールは値段も飛びぬけて高く、上で載せたFULCRUMは約51万円、Campagnoloに至っては約67万円します。
もちろん回転性能(摩擦抵抗の減少)においても圧倒的な性能を持っているので、叶うならば是非とも手に入れたいですね。
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自転車メーカーに付帯するパーツブランドであれば最上級グレードであってももう少し価格を抑えて選ぶことができます。TREK傘下のBONTRAGERが出しているAeolus RSL 37 TLRは前後合わせて1325gとブランド内では最軽量で価格は約37万円です。
話は変わりますが…最近ではコストを抑えた海外通販や直販専門のホイールブランドも増え、驚くような価格で軽量なホイールが手に入ります。しかし大手メーカーのホイールと比較すると研究に投資した費用や商品として出荷できる品質管理の面で劣っている事もあり、結果として軽いだけで走らないホイールも見かけます。(もちろん、流通コストを抑えることで優れたホイールを販売するブランドもあります)
なにせ軽いホイールだけならば、リムのカーボンを減らしてスポークもカーボン製にすれば作ることができるのですから。
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その上でレースで使える剛性感や耐久性能を持っている信用のあるホイールは、プロ選手に協力してもらい、様々なテストを行ったうえで商品化された大手メーカーだからこその製品です。
私がお伝えしたいのは、路面抵抗を受け高速走行に耐える自転車の部品の中でも最も大きな役割をもち命を預けるホイールだからこそ、軽いという理由だけで選んではいけないという事です。
…
…
ここまではトップグレードのホイールに関するお話になります。
ヒルクライムでトップを目指す、お金を気にせずアップグレードして少しでも結果を良くしたいと高額なホイールを買えるのは一部の方であって、多くの方はできるだけ価格を抑えて軽いホイールに変えたいと考えます。
もちろん私もその中の一人であり、ホイールは車体価格の半分程度、今回で言えばEmonda SL5が39万円だから20万円以下でヒルクライムで使えるホイールを手に入れたいと考えました。
そこで皆様に勧める前に自身を実験台にして試してみようと導入したのがこのホイールです。
GROWTAC EQUAL手組カーボンホイール
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以前載せたブログで紹介した日本の自転車パーツメーカー「GROWTAC(グロータック)」がオリジナルで設計したハブにSAPIM社のスポーク、グロータックが厳選した工場で造られた品質の良いリムを販売するお店のメカニックが手組で組み上げるホイールになります。
より詳しい説明はこちらの記事で紹介しています↓
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このホイールの魅力は何といっても20万円を切る、正確には軽量スポーク選択で約17万円で前後たったの1320gのホイールが用意できることです。加えてハブとニップルの色が選べるので、他人と被りにくいオリジナル感を出せるのも良いですね。
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上で大手メーカーの話をしたにも関わらず、あなたは日本でまだ馴染みのないメーカーのホイールなのかと突っ込まれそうではありますが、そこが自身を実験台にしてみたお話です。
先にお伝えするとこのホイールは組み上げるメカニックにもよりますが、大手メーカーの20万円台のホイールと同等の性能があります。
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実際に私が組み上げて自身で使っていますが手組だからこそスポークテンションの調整が容易で、しなって乗り心地の良い乗り味から、踏めばしっかり反応するカッチリとした乗り味まで再現できます。
今回はヒルクライム仕様で踏んでも力が逃げない剛性重視の仕様で組み上げました。
特にSAPIMのエアロスポークCX-Rayは軽量ながらテンションを高く上げられます。
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またグロータックのハブは独自の設計により、スルーアクスルをしっかり締め込んだ際に内部のベアリングの摩擦抵抗が減るオートプリロード機能を採用しています。
この機能に関して私はこれまで他社製のホイールで聞いたことがなく、内部のベアリングが特別に優れたものでなくてもベアリング自体の性能を余すことなく引き出せるので抵抗は少なく良く回ります。
見た目の色が変えられるだけでなく、実際に良く回るハブとして非常に好感触でした。
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リム自体もグロータックのオリジナルではないものの、品質は良く指で強く握っても凹まない硬さがあります。
また近年大手メーカーの採用が増えてきたリム内幅23㎜に近い22㎜を採用しているのも嬉しいポイントです。
この内幅であれば最適な組み合わせとして25~28cタイヤにおいて路面抵抗と快適さのバランスが取れます。
ちなみに23㎜というと最近ではCampagnoloの新型BORA ULTRA WTOやFULCRUMの新型SPEEDシリーズ、それにBONTRAGERではAEOLUS RSL 51/62/75で採用されており、従来の21㎜から近年主流になりつつある規格です。
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その上でリム重量は30㎜ハイトで約360gと軽量。クリンチャー・チューブレスレディに対応しています。
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このホイールをEmonda SLに取付けて走ると、まず踏み始めの軽さに驚きました。
軽い力でもスッと加速してくれるので漕ぎだしがものすごく楽になります。
また前後重量が1320g、とりわけリム自体が軽量なので登っている最中でもホイールを回すことに負担を感じず、より疲れずに登れるようになりました。
少なくともこれが20万円を切ったホイールだとは到底思えない性能を持っています。
もちろん、30万円を越す大手のホイールと比較すれば性能は一歩劣るものの、今ディスクブレーキ車体に乗っていて10~20万円台でホイールを検討している方には自信をもってお薦めできます。
タイヤ・チューブ
タイヤとチューブに関してはロードバイクにおける価格を抑えて軽量化しやすいパーツの代表です。
特にホイールの遠心力が掛かる部分にあるパーツなので、軽ければ軽いほど回すために必要な力が減ります。
またヒルクライムレースでは軽量化のためにレース中パンクキットや工具は持ちません。
万が一パンクしたらその時点でレースは終了なので、レース前にはチェックして傷があったり摩耗して削れているなら交換しておきましょう。
IRC ASPITE PRO S-LIGHT クリンチャータイヤ
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以前は軽量化重視でMAXXISのハイロードSL、1本170gの超軽量タイヤを使っていましたが最近はどのバイクでもIRC ASPITE PRO S-LIGHT クリンチャータイヤを使っています。
170gのタイヤは物凄く軽い代わりにタイヤ自体が薄すぎて乗り心地が硬く、路面からの衝撃が痛かったためヒルクライム本番のためだけなら良いのですが、その後も通常のライドで使うには辛いので辞めました。
ASPITE PRO S-LIGHT重量は28cで1本233gと少し重く感じますが、他社のレーシングタイヤと比較すれば十分軽いです。何よりIRCの軽量タイヤとして謳われているにも関わらず、乗り心地と耐久性の良さが優れています。
雨の日や峠からの下りでも安心して走行できるのでお薦めですよ。
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ちなみにTREKのミドルグレード以下の完成車に採用されることが多いBONTRAGER R1タイヤは28cで1本約360gもあります。タイヤを換えるだけで100g以上ホイールを回す際の負担が変わると考えたら効果は大きいですよね。
今自身が使っているタイヤの重量を調べて、1本7,000~10,000円程度で片側100g以上軽くなるのなら絶対に交換すべきです。
Magene EXAR TPUチューブ
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今やブチル(ゴム)チューブに並ぶ価格帯でも手に入るようになったTPU(熱可塑性ポリウレタン)チューブです。
最近ではネット通販でも安く手に入りますが、私はMageneのEXAR TPUチューブを愛用しています。
一般的なブチルチューブが1本あたり100~120gに対し、EXAR TPUなら1本36gしかありません。
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上の記事でも紹介しています。
私がMagene製のチューブを選ぶのはTPUならではの弱点でもあるバルブ根本の弱さをしっかり補強して作られている事です。加えて1本1650円とブチルチューブのようにお手ごろな価格で手に入るので、万が一のパンクでも気兼ねなく交換できるのも良いですね。
なぜチューブレスレディにしないのか
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今やチューブレスレディは完成車を購入すると始めから採用されていたり、最近のZIPPのフックレスリムのようにチューブレスレディでしか基本使えないホイールと普及しつつあるチューブレスレディですが、私はクリンチャー(チューブイン仕様)を好んで使っています。
そもそもチューブレスレディとはチューブを使わずに膨らます仕様で、タイヤ内部の気密を維持するためにシーラントと呼ばれる一般的にラテックスを含んだ液体で隙間を埋めています。
前提としてチューブレスレディに対応したホイール・タイヤ、専用のリムテープ・バルブ、シーラントが必要になります。
私がチューブレスレディを使わない理由として、一つ目にクリンチャーの方が軽くできるからです。
例えば上記で挙げたMaxxisのハイロードSL(170g)とTPUチューブ(36g)なら併せて206gです。
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しかしチューブレスレディのタイヤならば25c相当のタイヤ単体でも軽くて250g台、少し重くて300g近くあります。
例えば国内で人気のあるCONTINENTALのGRAND PRIX 5000S TRなら250gあります。
またシーラントを追加するのでおよそ40ml程度ここに重量が加わることになります。
そうなると「チューブレスレディ対応タイヤ+シーラント」より「軽量タイヤ+TPUチューブ」の組み合わせの方が軽くなります。
2つ目にメンテナンスの手間の多さがあります。
ラテックスを含んだシーラントは一般的に3~5か月前後でラテックスが固まり、ラテックスを含まない液体だけが残りシーラントとしての機能が低下します。
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その際は古いシーラントを拭って新しいシーラントに入れ替えるのですが、既にタイヤ裏にはラテックスが固まって付着しており、完全に剝がすことはできません。そうなると新しいシーラントと固まって残ったシーラント(ラテックス成分)が合わさって以前よりもわずかに重量が増えます。
かといって3~5か月に一度のペースでタイヤ毎交換するのは、プロやレース主体のライダーでもない限り、タイヤの摩耗具合や費用面を考えても現実的ではありません。
最近のレースでは28cなど太めのタイヤが使われるようになり、その上で雨コンディションや滑りやすい路面での走行はかなり低圧で乗るようになりました。そこでチューブレスレディならばグリップ力の向上とリム打ちパンクのリスクをなくせることでメリットがあります。
ですが長期間の使用を想定したホビーライダーにとってはクリンチャータイヤ+チューブならばパンクさえしなければ、そのまま使い続けられるのでシーラントの劣化・交換を気にせず乗れるクリンチャーは手間がかかりません。
私自身もそうですが、同じタイヤを1年以上使い続けるようなライダーであればクリンチャー仕様はお財布に優しいですね。
実測重量
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先日までホイールはシマノのアルテグラ「WH-R8170 C50」(前後重量1570g)を使用しており、ペダル込みの重量は7.82kgありました。
そして今回のGROWTAC EQUAL手組カーボンホイール、TPUチューブに変更したところ7.41㎏と約400gの軽量化ができました。ここに本番はドリンクボトルが1本とサイクルコンピュータ、アクションカメラが増えます。
今年はこの重量で勝負したいと思います。
ホイールまでとは言わないものの、もし今使っているタイヤ・チューブが重いものならば是非本番までに換えてみてはいかがでしょうか?
パーツ交換に関するご相談お待ちしてます。
結果報告
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この記事を書いたのは…
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STAR☆BIKES 瀬谷祐介(メカニック/ライドイベントアテンドスタッフ)
自転車業界に勤めて7年目、普段はロードバイクでのロングライドや県内の未走行のコースを探索し、STAR☆BIKESのコース紹介記事も書いている。ヒルクライムが好きでMt.富士ヒルクライムにも毎年出ているが、登りはけっして速くない。夏場にはMTBでふじてんに行きパークライドも楽しむ。
これまで50台近いバイクに乗り換えており、バイクの特徴を掴んでお客様の希望に合わせた1台を提案することに長けている。